抒情歌

2017年に設立した同人サークル抒情歌のブログです。主に文学フリマで『グラティア』という文芸同人誌を頒布しています。

ジェラテリア・イル・ブリガンテと、セイヨウヤマモモの蜂蜜

文=秋津燈太郎

https://gelateriailbrigante-blog.at.webry.info/200811/article_1.html

 

料理の評価は状況や文脈に応じておこなうべきだ。

要するに、繊細な懐石料理も大味な駄菓子もそれぞれの領域において鑑賞すべきであって、食べる側の意識と状況次第でどんな物も「おいしくなりえる」と思っているクチなのだ。(そもそも人間はバイアスと思い込みの生き物なので、気の持ち様でいくらでも認識は変わる)

存在そのものを愛してるアイスやジェラートの類はその傾向がより強く、ガリガリくんやジャイアントコーンのようなコンビニアイスから、サーティーワンやコールドストーンといったチェーン店、果てはジェラテリア・アクオリーナなどの名店に至るまで、様々なジャンルのアイスを好んで食べている。

仕事帰りにコンビニで買ったアイスなら甘くて冷たければオッケーオッケー。

記念日のデートで寄った店ならば、食感が繊細で味に深みと広がりがあればよく、欲を言うのであれば、爽やかな酸味のあとに少し遅れて甘みが迫ってくるなどのシナリオまで考慮されているなら最高だ。

上記の「こだわらないというこだわり」は、常に食べたいと思えるアイスは存在しないことの換言でもあるのだが、つい先日、鎌倉散策で立ち寄ったジェラテリア・イル・ブリガンテのジェラートは、そんな庶民的スタンスを木っ端微塵に破壊するような、いついかなるときでも食べたいと心の底から思える素晴らしいものだった。

ilbrigantejapan.co.jp

鎌倉駅東口を出て左側に伸びている小町通りを5分ほど歩いた先にあるこの店は、ホームページを読むかぎりでは多くのこだわりを持っているらしい。化学製品の不使用、原材料の選定、気候によるレシピの変更などなど。(そのほかにも店主の奥様が丁寧に教えてくれたのだが忘れてしまった)

そのなかでとりわけ解りやすいのは原材料で、世界でゆいいつ苦味のあるらしいセイヨウヤマモモの蜂蜜を用いたジェラートは、まさしく絶品の名にふさわしい一品だと断じても良いだろう。

端的に言うと、緻密な計算に基づいて味のシナリオが構成されている。

最初に強いコクを纏った蜂蜜のあまみが押し寄せたかと思うと、野性味にあふれながらも柔らかなウィスキーとよく似た苦味が続く。基本的には強い味で構成しているゆえに、ともすれば後味が残りすぎる可能性も考えておられるのだろう、強烈な甘味と苦味をきれいに溶かす工夫も忘れないのだから感心する。

嬉しいことに、私よりもずっと前にその味に感銘を享けた方がいるようだ。

blogs.yahoo.co.jp

ジェラテリア・イル・ブリガンテで使用しているであろうセイヨウヤマモモ蜂蜜について書かれているページも貼っておこう。イタリア語(だよね?)を読める蜂蜜好きはぜひ。

www.anticaapicolturagallurese.it