抒情歌

2017年に設立した同人サークル抒情歌のブログです。主に文学フリマで『グラティア』という文芸同人誌を頒布しています。

短編アニメ - デビッド・オライリー『おねがい なにかいって』

文=竹宮猿麿

 

vimeo.com

最近、David O'Reillyの『Please Say Something』という短編アニメーションを観ました。2009年の作品なので古いものだと言えなくはないですが、さいわいにもまだ全然楽しんで観ることができました(そういうものを、もしかしたら良作と呼ぶのかもしれません)。

アニメーションと聞いて我々が思い浮かべるのはおおよそ日本アニメ、より厳密にはアニメ風のタッチで美少女が描かれている動画(いわゆる美少女アニメ)ではないでしょうか。しかし、たとえばアメリカには『パワーパフガールズ』『マイリトルポニー』といったカートゥーン・アニメ、『リック・アンド・モーティ』のようなシットコム・アニメがあり、日本には、かの有名な宮崎駿に象徴されるジブリ・アニメをはじめとして、押井守イノセンス』のような映画の影響を受けたアニメ、新海誠『君の名は』のような爽やかで綺麗な画面のある種「純粋な」アニメ等々があります。アニメにも多様性があるという話ですが、作者のオライリーさんはアイルランド出身でドイツのベルリンを拠点に(少なくとも当時は)活動していたというのですから、そこから察するに、アニメの国際的多様性というのは東京某所でひっそりと生きている筆者の想像を軽く超えていくほどのものなのでしょう。

当作品はネズミとネコのカップルの物語を描いたもので、全編に切なく仄暗い雰囲気が漂っています。この世界のネコはみんな頭が巨大で、とてもかわいらしいです。あまり見ないタイプのデフォルメの仕方のおかげか、単純な割には見ていて飽きが来づらいように感じます。

建物や家具から生物に至るまで、作中世界のあらゆるものが直線的に、またはゴツゴツとした姿で表現されているあたりは当時の「バーチャル・リアリティーへのイメージ」が過剰化された形で反映されているようで面白いです。どんなものでも古くなってしまうので仕方のないことではあるのですが、時代を感じます(とはいえ、表現の古さ新しさが作品の面白さに直結するかといえば、かならずしもそうではないでしょう)。

おおよその感想としては、泣ける話で楽しめました。ネズミがネコにドメスティック・バイオレンスを行うというあたりがあべこべでよかったです。

 

 

なお、作者のデビッド・オライリーさんのサイトです。

David OReilly

ついでに他の方が当作品について書いた記事も上げておきます。

ネズミとネコの夫婦の困難な関係を描いたアニメーション | しちごろく

『おねがい なにかいって』デヴィッド・オライリー – たんぺん メイキング 拾い

David O’Reilly「The External World」 - CHARA PIT