抒情歌

2017年に設立した同人サークル抒情歌のブログです。主に文学フリマで『グラティア』という文芸同人誌を頒布しています。

UTAUオリジナル曲 『ホワイトナイト』


文=榊原けい

 

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 このところ、実家付近の景色をよく夢に見る。
 現れるのは薄暗い公共施設や外界の音が遮断された雑木林――私が不登校のころに彷徨っていた場所ばかり――である。

 治療のためと言い張ってアルバイトで生活の諸経費を稼ぎながら大学へ通うことで何かが好転すると考えていた私は、無意識汚染の深刻さを甘く見ていたのだろう。

 けっきょくのところ、その好ましいと忌まわしいとに関わらず、スケールの大小に関わらず、記憶力の続く限りは誰もが自分の過去と共に在り続けるのだと思う。


 不登校のころを振り返ると、混乱と無気力の底へと沈んでゆく私を、当時繰り返し聴いていた曲が食い止めてくれていたように思う。

 

 あらゆる人に心を閉ざすとき、唯一触れ合える他者は作品のみ。

 ありふれた話ではあるけれど、作品によって心が救われることもあるようだと思う事にしている。

 それはおそらく、作品が社会的あるいは公共的に評価できるかどうかといったことではなく、個人的に作品に癒されるとか、そういうことなのだ。

 個人の精神に作品が寄り添う、とか、癒す、とか、そういったことは基本的には評論や批評では語られることがないので、今回はそういうものについて書いておこうと思い、書いてみる次第だ。

 

 私にとってのそういった作品はいくつかあるのだが、N・W・レフン監督『ドライヴ』やNas『Purple』、Nujabes『Lady Brown』など、と挙げてみるとどうも音楽に多いらしい。

 ダウナーな情感を醸し出すメロディラインをもつもの、といったような傾向性は見出せるけれど、それだけでは不十分な気がする。

 本記事では、上記のような経緯でお世話になった曲を紹介したいと思う。

 

www.nicovideo.jp

 

 ナカノは4番という人の『ホワイトナイト』という曲である。

 脆さと甘やかさのあるメロディラインに、意味するところこそ汲み取れないものの語り手の苦しみを暗喩したような歌詞、そして人間ではないボーカル。
 私はその曲に色々なものを見ていた。冬が訪れる直前の、乾いた空気の中に充満する腐葉土の匂い、桃白色の空、正体の解らない懐かしい匂いがする風。

 そうして思い起こされたイメージや曲の情感に少なくとも私は助けられたし、皆さんにとってもそういった作品があれば、Twitterやブログなどを通してシェアしてみるのもいいかもしれないと思う次第だ。

 

 記事の最後に、作者の方のほかの作品やSNSへのリンクを貼って締めくくらせていただきます。

 それでは。

 

 

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