抒情歌

2017年に設立した同人サークル抒情歌のブログです。主に文学フリマで『グラティア』という文芸同人誌を頒布しています。

【連載:ゲームと選択肢】第二回 『OneShot』

文=一条めぐる(@ichijo_meguru)(同人サークル「あるふぁちっく」主宰)

 

こんにちは、一条めぐるです。

今回は、前回の最後で言及した「選択すること」について『OneShot』というゲームの紹介を交えながら書きます。

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【『OneShot』とは】

『OneShot』とは、2016年12月9日にsteamでリリースされたゲームです。
『OneShot』は2014年にフリーゲームとして配布されたものが最初であり、このオリジナル版はゲーム制作ツール『RPGツクール2003』で制作されています。その後、2016年に『RPGツクールXP』で制作されたのがリメイク版です。

今回ご紹介するのは、このリメイク版のほうです。その点についてはあらかじめご了承ください。

また『OneShot』は、ネタバレを読んでいるかどうかでプレイの質が大きく変わる作品なので、重大なネタバレは避けますが一応ご留意ください。

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【『OneShot』の概要】
『OneShot』は、主人公の「ニコ」が突然見知らぬ世界で目覚めるところからはじまります。プレイヤーはニコを導き、元の世界に返してあげなければなりません。そして、プレイヤーはゲーム内で「神様」と呼ばれています。
舞台となる世界は、太陽が消えてしまっており、暗闇に閉ざされています。このままでは破滅を迎えてしまいますが、幸いにも預言者ロボットによれば救いがあるといいます。なんと、ニコが地下室で見つけた電球がこの世界にとっての太陽らしいのです。これを遠くに見える塔に持っていくのが、ゲームの当面の目標になります。

つまり、このゲームの基本にあるのは「暗闇に閉ざされた世界で新たな太陽を運ぶニコ、それを導く神様」という構図です。

(注)バックストーリーや細かな操作感などについては、こちらの記事が参考になるかと思います。

 

【『OneShot』における選択の重み】
このゲームの特徴は「プレイヤーも登場人物である」ということに尽きます。

プレイヤーの選択によって世界は、あるいはニコは不幸な目に合ってしまうかもしれません。それはつまり、あなたの決断がゲーム世界を不可逆的な事態へと進ませてしまうということです。
「一度きり」という意味のタイトルを持つ『OneShot』はオートセーブ式の作品であり、そのため、ゲームが不可逆的に進行していく仕組みになっています。プレイヤーの選択に意味を持たせるようにデザインされているのです。

前回の記事で紹介した、正解に辿りつくまで何度もやり直せる『Will』とは、まったく逆の仕組みだと思います。
そもそも、現実の世界では選択した行動はやり直せない一方、「セーブ」と「ロード」という便利な機能があるゲームの世界では、不都合なことが起こった際は「セーブ」した時点から選択をやり直すことができます。
そのとき、先ほどまでのプレイ内容はゲーム世界にとって「なかったこと」になります。

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しかし『OneShot』では、「セーブ」「ロード」といった機能は原則禁止されています。恐らくはプレイヤーとゲーム世界を繋ぐためでしょう。
それゆえに、ひとつひとつの選択がプレイヤーにとって重い意味を持つことになるのです。

 

【『OneShot』のメタフィクション性】
『OneShot』のように、ゲームという画面内に限定された枠組みを超えて、現実のプレイヤーに直接的に働きかけてくるような構図や属性を持ったゲームはしばしば「メタフィクションゲーム」と呼ばれます。
最近のゲームでは、そのようなメタフィクション性は、プレイヤーの無責任さを咎めるようなネガティブな方向で用いられている場合がすこし多いかもしれません(これは込み入った話になってしまうため、こちらでは割愛させていただきますが、より詳しく知りたいかたは、複数タイトルのネタバレを含みますが、こちらの記事が参考になるかと思います)。

しかし『OneShot』にかぎって言えば、メタフィクション性はどちらかといえばポジティブな方向で用いられており、たとえば
「そもそも、なぜあなたのPCが別世界と繋がっているのか?」
「ニコが飛ばされた世界では一体なにが起こっているのか?」
「あなたはニコに対してなにをしてあげられるのか?」
といったような事が、物語を進めるうちに明らかになっていきます。

また、『OneShot』のメタフィクション性は「ニコや、冒険の先々で関わることになるキャラクター達にリアリティを与え、プレイヤーに自身の選択の重みを理解してもらうようにすること」「PCゲームだからこそ可能なギミックが多数用意されていること」の二点によって特徴的なものとなっています。
もしご興味を持たれた場合は、ぜひニコと共に世界を歩き回ってみてください。
「神様」として課せられた選択にはつねに重い意味がつきまとうことになりますが、だからこそ、『OneShot』は忘れることのできない思い出のゲームになりうるはずです。

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それと、ニコはとても純粋でかわいいです。
愛らしいキャラクターと世界を回り、ときおり会話を交わすのもこのゲームの醍醐味なので、ぜひ仲良くしてください。

 

次回は、ゲームの「選択肢」について、すこし掘り下げてみたいと思います。
それでは。